相続対策で一番大切なこと

前回は相続の基本的なことを簡単に紹介しました。
第2回目ということで、相続対策について書きたいと思いました。

家族への「愛」ありますか?

相続は、被相続人が亡くなってからでは対策のしようがないため、生前の対策が非常に大切です。
では、その「相続対策」で、何が一番大切なのか、ということを書いていきたいと思います。
(肌感ですが、これは語られることが少ない気がします。)

私は、顧客から、「相続対策で一番大事なことはなんでしょうか」と聞かれた際に、必ずこれをお話ししています。
それは、ずばり「愛」です。
家族に対する「愛」、これが何より大事。
みなさん、家族への「愛」、ちゃんとありますか?
自分が亡くなったときに、家族間でなるべくトラブルにならないよう、注意を払い、準備するという心構え、これが大切です。
逆にいえば、残された家族に対して「愛」がなければ、自分が死んだあとを気にして相続対策などしないのです。
相続とは残される人たちへの最後の愛情表現に他なりません。
なので、被相続人が相続対策を考えるにあたり、残された家族に対する「愛」を大事にすると上手くいく、
というのが私の考えであり、信条です。

では、具体的にどういうことか、という実務的な話になると、
次の2点が大事だと考えています。

①遺言書を書く

前回も書きましたが、相続では遺言書の内容が優先されます。
このため、被相続人は自身の死後の相続トラブル、家族トラブルを回避するために、
遺言書の内容を自分で決めることができるのです。
この事実すら知らず、ある程度の相続財産がありながら遺言書を用意しない方が、多い気がします
(あくまで私の感覚ですが。。。)
相続財産がある場合には、遺言書を必ず作りましょう。

②家族で話しておく

遺言書の内容について、家族と話しておきましょう。
遺言書の内容を誰にも伝えないまま被相続人が亡くなると、当たり前ですが揉めることが多いです。
ここで大事なのは、「揉めることを回避する」という視点ではありません。

私の経験上、相続財産がそれなりにある場合、相続人全員が納得して円満に終わることはあまりないです。
誰かしら必ず不満を感じるのは、仕方がないことだと思います。

重要なのは、「被相続人の死後に遺言書の内容を相続人が知り、そのタイミングで揉めるのが良くない」、ということです。
被相続人が亡くなってから、相続に関する争いを解決するのは至難の業で、相続人間で裁判を起こすケースもあります。
裁判となれば、金銭的な落としどころはできるかもしれませんが、家族関係は修復困難なものとなります。
また、相続は時間勝負な側面もあるので、被相続人が亡くなってからの争いは、精神的にも体力的にも、相当大変だと思います。

なので、被相続人が健在である状況下で、家族で話し合っておき、不満があれば意見をぶつけておくのです。
このタイミングであれば、被相続人が間に入りバランスを取ることもでき、後々の争いを回避することもできます。
ここで、「被相続人の生前に家族の中で喧嘩になるのでは?」ということをおっしゃる方が多いですが、
それはあまり気にしても仕方ありません。
なぜなら、そのタイミングで揉めるようなら、被相続人が亡くなってから遺言書の内容を開示された場合、
よい一層揉めるからです。

私は、被相続人の生前の心の安堵を図るため、問題を先送りにすることは良くないとのスタンスです。
ここが、家族「愛」が大事というところです。
自分の死後、家族の関係性が変わらず、残されたみんなが幸せにその後の時間を過ごせるようする、
ということを重視していただきたいと考えています。
もっといえば、これが相続がうまくいく秘訣ともいえます。

②の補足(二次相続を考えよう)

また少し補足すると、一次相続だけではなく、二次相続も考えることが大事です。
一次相続というのは、「相続人である子からみた被相続人である両親どちらかが亡くなった際の相続」です。
もっといえば、夫から妻へ、妻から夫へ、というケースです。
被相続人が相続、遺言に関して、考える、家族と話す、という場面において、
二次相続のところまで考えて話しおくことが必要だと思います。
なぜなら、親が健在のときに穏当にやり過ごしても、両方の親が世にいなくなったタイミングで揉めるケースが多いからです。


この記事は、筆者の経験等に基づき、記事更新時点で最新の情報を記載するものです。具体的な手続きや法的な問題に対する対策、また、相続についてさらに詳しい情報や個別のケースに関するアドバイスが必要な場合は、専門家に相談することをお勧めします。