はじめに
相続とは、亡くなった人の財産などの権利・義務を、残された家族などが引き継ぐことをいいます。ここで大事なのは、権利だけではなく、義務を引き継ぐというところです。
もっといえば、被相続人が借金だらけなら、その借金を相続人が引き継ぐということもありえます。怖いですね。。。
相続に際しては、誰が相続人となり、遺産(または借金等の債務)がどのような状況で、被相続人の権利義務をどのように承継するかを整理しなければいけません。これがとても大変です。預金口座がどうなっているのか分からない、土地の権利関係の書類がどこにあるのか分からない、借金がいくらあるのか分からない、果ては、婚外子の存在が急に発覚する等、まさに人間ドラマ、その人の「人生」の総決算を残された人がやらねばなりません。
このため、被相続人が亡くなってから準備をするというのでは、あまりに遅いといえます。お葬式だけでも大変なのに、少し財産を持っている方であればもう大混乱です。
なので、私としては、「早い段階での相続対策」ということを強く推奨します。弁護士や税理士等のプロにお願いするのが一番良いのですが、報酬は高額となります。なので、何を差し置いても一番大事な事は、相続を「知る」ということです。正しい知識を知るということは、どんな場面において、必ずあなたの味方になってくれると思います。
このサイトを多くの方にご覧いただき、相続に苦しむ人が少しでも減り、円滑な相続が行われ、一人一人の人生が幸せなものになればと思っています。
法定相続と遺言相続
相続の体系を理解するために「法定相続」と「遺言相続」という分類が重要だと考えます。
相続の関連業界では常識ですが、遺言書がある場合は、原則としてその内容が優先されます。これは、民法第964条「遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。」という法律を根拠とします。(ここでいう「遺言者」は、被相続人のことです。)
つまり、遺産を相続するということに際して「遺言者の意思」が最優先ということです。
このため、「遺言相続」、つまり遺言書があるかどうかは、相続事務においてとても重要なのです。
遺言書がない、または、遺言書で相続財産の配分が指定されていないものがある場合、ここで初めて「遺産分割協議」を行う流れになります。遺産分割協議では、相続人等の全員の合意に基づき、相続財産の分け前を決めます。ここでの分け前の決め方は自由です。
遺産分割協議で話がまとまらないところまできて、家庭裁判所等で遺産分割の方法を決定します。「審判」というやつですね。この審判の段階で、ようやっと法定相続分に基づく相続方法が決まる流れです。
相続のスケジュール
相続は、人が亡くなった瞬間に自動的かつ強制的に発生するライフイベントです。「私には関係ない」と思う方を多くいらっしゃるかもしれませんが、親兄弟、親戚等がいる以上、逃れることはできないと思っておいた方が良いでしょう。
相続は時間勝負です。色々な手続きには期限があります。このため、「忘れていた」、「うっかりしていた」では済まされない、深刻な状況に陥るケースもあります。ざっと、以下のスケジュールだけは、概要を把握する意味で有意義だと考えます。
7日以内(被相続人死後7日以内という意味。以下同じ)
- 死亡届の提出
10日-14日以内
- 年金・健康保険の手続き(これが14日以内)
- 厚生年金保険の手続き(これが10日以内)
3ヶ月以内
- 保険会社への連絡(死亡保険をもらえます)
- 金融機関への連絡
- 遺言書の確認/検認
- 相続人の調査
- 相続財産の調査
- 遺産分割協議の開始
- 相続方法の選択
- 遺産分割調停/遺産分割審判
4ヶ月以内
- 所得税の準確定申告
10ヶ月以内
- 遺産分割協議書の作成
- 金融資産(預金や有価証券)の名義変更/解約
- 相続税の申告
1年以内
- 遺留分侵害額請求
3年以内
- 配偶者相続税軽減の手続き
- 不動産の相続登記
まとめ
相続の一番さわりのところ、「法定相続」と「遺言相続」、相続のおおまかなスケジュールを解説しました。専門家ではない方は、これだけでも難しいと感じたかもしれません。しかし、相続は深く細かい論点がいくつもいくつもあります。その先に、「相続税」の論点があります。
これから、相続で知りたいこと、分からないことを、的確に解説できるよう心掛けてまいります。引き続きよろしくお願いします。
この記事は、筆者の経験等に基づき、記事更新時点で最新の情報を記載するものです。具体的な手続きや法的な問題に対する対策、また、相続についてさらに詳しい情報や個別のケースに関するアドバイスが必要な場合は、専門家に相談することをお勧めします。