前回の「相続対策で一番大切なこと」では、家族への愛ありきの相続であることを書かせていただきました。愛はもちろん大事ですが、具体的にどうするのか?というところで、やはり「遺言書を書く」ということが相続対策でとても大事な事です。
今回は、遺言書について、遺言書って何?書き方に注意点は?というところを中心に簡単に解説したいと思います。
まず、「遺言」の定義は法律上に規定されているものはありません。
デジタル大辞泉では、
「人が、死亡後に法律上の効力を生じさせる目的で、遺贈、相続分の指定、相続人の廃除、認知などにつき、民法上、一定の方式に従ってする単独の意思表示。」https://kotobank.jp/word/%E9%81%BA%E8%A8%80-30367
とされています。
一方、遺言を有効にするためには、「自筆証書」「公正証書」「秘密証書」によらなければいけないとされています(民法第967条)。これらをひっくるめて、「遺言書」といいます。
つまり、自分の死後、こうしてほしい、ああしてほしいということがあれば、民法上の定義に沿って書いた書面がなければだめということです。
また遺言書には3つの方式があります。
以下、遺言書を書く場合に必ず守らなければいけない要件を、遺言方式別に簡単にまとめました。
1.自筆証書遺言
①全文を遺言者(被相続人)が自筆で書く(財産目録だけはPC等で作成OKです)
②日付を自筆で書く
③遺言者(被相続人)の氏名を自筆で書く
④押印する(実印が望ましい。ただし、認印、銀行員でもOK。拇印や指印も最高裁判所判決だと有効とされていますが、本人ものであるという証明が難しいので辞めておきましょう)
*留意点
一番簡単で、お金もかかりませんが、遺言者(被相続人)の死後、遺言書の検認という手続きが必要になります。
鉛筆や消せるペンもNGです。
修正は、修正液の使用はせず、二重線で消して訂正印を押しましょう。
自筆証書遺言は、改ざんのリスクが高いので、保管場所は慎重に検討してください。なお、自筆証書遺言は、 令和2年7月10日から法務局で保管することができるようになりました。 自筆証書遺言で遺言書を作成する場合には、絶対に保管制度の利用したほうが良いです。
2.公正証書遺言
①証人2名以上の立ち合い必須
②遺言者(被相続人)が遺言の趣旨を公証人に口授する
③公証人が、遺言者(被相続人)の口述を筆記し、これを遺言者(被相続人)及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させる
④遺言者(被相続人)及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者(被相続人)が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
⑤公証人が、その証書は①~④に従って作ったものである旨を付記して、署名し、印を押す
公正証書遺言は、費用がかかります。https://www.koshonin.gr.jp/notary/ow02/2-q13
ただし、検認は必要ないですし、何より確実なので、多額の相続財産を持つ方の場合、公正証書遺言が安心でしょう。
*留意点
証人には、 利害関係者 (相続人や受遺者など) はNGなので、注意しましょう。
3.秘密証書遺言
①遺言者(被相続人)が、証書に署名し、押印する
②遺言者(被相続人)が、証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印する
③遺言者(被相続人)が、公証人1人+証人2人以上の前に封書を提出して、自分が書いた遺言書である旨と、筆者(つまり自分)の氏名と住所を申述(伝えるということです)する
④公証人が、その証書を提出した日付、遺言者(被相続人)の申述を封紙に記載した後、遺言者(被相続人)と証人と一緒に署名し、押印する
*留意点
円満な相続を行う場合には、あまり使う方式ではないと思いますが、稀に使う人はいます。結構揉めること多しです。。。
こちらも証人は、 利害関係者 (相続人や受遺者など) はNGです。
おまけ
遺言書の記載内容については、別途解説しますが、最後に一つだけ。
遺言書の内容は、ある程度自由です。そこで、是非、ご家族への感謝の言葉など、書かれてはいかがでしょうか。前にも書きましたが、相続は家族への愛ありきです。普段照れくさくて言えない、温かい言葉を添え、ご自身の人生を締めくくるというのは、なかなか粋ではないでしょうか?
この記事は、筆者の経験等に基づき、記事更新時点で最新の情報を記載するものです。具体的な手続きや法的な問題に対する対策、また、相続についてさらに詳しい情報や個別のケースに関するアドバイスが必要な場合は、専門家に相談することをお勧めします。